狩の現場で起きた“まさか”の出来事
危険すぎる狩猟のリアル
「一つの山で無線機をもって行動をして
鉄砲をもってる者で山の獣道を囲うんですよ。」
そう言って話し始めたイズミさん。
「仕留めたはず」が一転、猪との真剣勝負
狩に犬を連れていき、
猪の匂いを覚えさせた猟犬たちを山の上から放します。
猪を追い立たせ、びっくりして降りてきたところを
待ち構えて仕留めるのがグループ猟。
獲物を追い立てる役割の人は勢子*と呼ばれます。
ある日の狩で、イズミさんは師匠と犬を連れて山を登っていました。
すると突然、目の前を猪の親子が走り抜けたのです。
「うわ、猪や!」
咄嗟に銃を構え、猪よりも上手にいたイズミさんは、狙いを定めて発砲。
同時に猪がゴロゴロと転げ落ちます。
「ううぉお、こけた!」
それを見たイズミさんはもう猪を仕留めたと思い、
最後のとどめを刺しに行こうと
ナタを取り出しながら降りて行ったのが、実は猪は転んだだけで、
打った弾は実はかすり傷程度。
猪はピンピンしていた。
雄の猪の牙は、研ぎ澄まされたナイフのように鋭く、
刺されるとひとたまりもありません。
「やばい!」
そう思ったイズミさんは、坂道を駆け下りていたそのままの勢いで体当たり。
猪を蹴り飛ばして馬乗りになり、手にしたナタで猪を仕留めました。
「あの時は、猪を仕留めることしか考えていなかった。」
イズミさんはそう振り返ります。
山に入り、猟犬とともに獲物を追う、
その一瞬一瞬が命の危険との隣り合わせ。
緊張感に包まれています。
一瞬の判断ミスが命取りになる狩猟の世界。
今回は、Rawtoの猟師・イズミさんが思わぬ事態に遭遇した
狩での体験をお届けしました。
*勢子(せこ)…巻き狩り(グループ猟)の構成員の一人のことで、
猟犬とともに山に入り、獣道や茂みに分け入って獲物を追い立てます。