山に囲まれた集落と、色づきはじめた田んぼ。京都府久美浜町(イメージ) 山に囲まれた集落と、色づきはじめた田んぼ。京都府久美浜町(イメージ)

狩猟免許を取った、綾部のひと。

週に二日か三日、綾部から舞鶴の加工場に通ってくる女性がいます。

去年、狩猟免許を取りました。それまで山とは縁のない暮らしをしていた人です。


私たちのフードを作っている猟師さんのところに、ある日、知り合いから話が来たそうです。狩猟を覚えたいという人がいる。教えてやってくれないか。

来たのは、大阪から綾部に移り住んだ女性でした。畑を少しやっている。生活のために何かを始めたいという話ではない。ただ、覚えたい。それだけでした。

「ゼロから、罠のかけ方から教えてほしい」

そう言われたそうです。

教える側にも、事情がある

猟師さんはひとりで加工場を回しています。捕獲された鹿を運び、解体し、乾燥機にかける。ひと月に作れる量には限りがあって、体力のほうが先に音を上げる。

人手が欲しくないわけがない。ただ、教えることは、その日の仕事を止めることでもあります。

ひとりなら一日に二、三頭を解体できる。教えながらだと、一頭に丸一日かかる。

それでも教えることにしたのは、彼女が「途中まで」を望まなかったからだと思います。ゼロから十まで、全部やりたい。そう言った。

一頭を、ひとりで

いま彼女は、一頭をひとりで解体できるようになりました。

猟師さんの言い方はそっけないものでした。「遅いけど、一匹ばらしといてって言ったら、できるようになった」。

一年です。

その代わりのように、彼女は加工場のパソコン仕事を引き受けています。書類を作ったり、データを整えたり。そちらはむしろ本職に近いらしく、手が早い。

お金のやり取りは、ほとんどありません。教える。手伝う。それで釣り合っている、という関係です。

技術は、書類には残らない

この話を聞いていて、思ったことがあります。

鹿を解体する技術は、教科書で完結しません。どこに刃を入れるか、どこで手を止めるか、この個体は何日前のものか。判断のほとんどが、隣で見ていないと伝わらない種類のものです。

そして、それを教えられる人は多くない。舞鶴でも、限られています。

猟師の高齢化はよく語られますが、本当に減っているのは人ではなく、伝わる場所のほうかもしれません。

週に二、三日。誰かが山に通ってくる。それだけのことが、実はかなり貴重なことなのだと、私たちは思っています。

私たちができること

Rawtoは、フードを作る会社です。狩猟の担い手を育てる立場にはありません。

できるのは、買い続けることだけです。

作った分が確実に売れる。翌月も、その次の月も注文が来る。それが分かっていれば、猟師さんは人を受け入れる余裕を持てる。教える時間を取れる。

私たちが「長く付き合いたい」と言っているのは、そういう意味です。おいしいものを安く仕入れて、あとはご自由に、では続きません。

彼女がこの先どうするのかは、私たちには分かりません。ただ、一年でひとり増えたことは事実です。

山の話は、山にいる人がいちばん知っています。私たちは、その隣を歩いています。

MAIZURU LETTERS ─ 舞鶴からの便り。

→ Rawtoについて


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