夏の朝、誰も歩いていない山道。石段の先に木立が続く(イメージ) 夏の朝、誰も歩いていない山道。石段の先に木立が続く(イメージ)

お盆のあいだ、罠は閉じている。

八月のなかば、加工場が数日間止まります。

暑さのせいではありません。人手が足りないからでもありません。

お盆のあいだ、猟師さんは山に入らないからです。

罠は、閉じられる

鹿を捕らえる箱罠は、食べもので誘い込んで扉が落ちる仕組みです。仕掛けたままにしておけば、鹿は入ってきます。

だからお盆のあいだは、罠のほうを閉じておく。入れないようにしておく。

「みんなそうなんですか」と聞いたら、そうだ、と返ってきました。この時期は殺生をしない。獲れる状態にしておかない。

罠を置かせてもらっている土地の持ち主から、電話がかかってくることもあるそうです。お盆のあいだは止めておいてほしい、と。

言われるまでもなく止めるけれど、言われることもある。そういう時期なのだと思います。

止めれば、その分だけ減る

今年の八月は、四日から五日ほど作業が止まりました。

止まるということは、その分だけ入荷が減るということです。加工できる量も減ります。八月はもともと、気温と湿度で作業スピードが落ちる月です。そこにさらに、数日の空白が入る。

それでも今月は、いつもどおりの量を仕上げることができました。猛暑とお盆をはさんで、それだけは。

私たちは、この四、五日を埋めようとは考えていません。

「制度としての、獲らない期間」と、そうでないもの

鹿を獲る時期には、制度で決められた枠があります。

十一月十五日から翌年二月十五日まで、というのが全国の原則です。ニホンジカについては三月十五日まで延長している地域が多い。これが狩猟期間です。

一方で、田畑の被害を防ぐための有害捕獲は、期間の外でも行われます。Rawtoの原料になっているのは、こちらの、獣害対策で捕獲された鹿です。

制度の上では、八月に捕獲することは何も問題がありません。むしろ被害が出るのは、作物が育つこの時期です。

それでも、止める。

制度が決めているのではなく、そこにいる人が決めている。お盆の数日間は、そういう時間です。

くわしくは鹿は、いつ獲られているのか。に書きました。

数字にならないもの

事業として見れば、四、五日の停止は損失です。年間で最も暑く、最も生産が落ちる月に、さらに止まるのですから。

けれど私たちは、この判断について一度も相談を受けていません。当たり前のこととして、毎年止まっている。

Rawtoは「命を活かす」と言っているブランドです。その言葉が本物かどうかは、たぶん、都合のいいときに何をするかではなく、都合の悪いときに何をやめるかで決まります。

八月の四日間。

それが、私たちのフードが作られている場所の、いちばん静かな時間です。

鹿がどう扱われて製品になるのかは、こちらに書きました。

MAIZURU LETTERS ─ 舞鶴からの便り。

→ 鹿肉ジャーキーを見る

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