お盆のあいだ、罠は閉じている。
Aug 23, 2026
八月のなかば、加工場が数日間止まります。
暑さのせいではありません。人手が足りないからでもありません。
お盆のあいだ、猟師さんは山に入らないからです。
罠は、閉じられる
鹿を捕らえる箱罠は、食べもので誘い込んで扉が落ちる仕組みです。仕掛けたままにしておけば、鹿は入ってきます。
だからお盆のあいだは、罠のほうを閉じておく。入れないようにしておく。
「みんなそうなんですか」と聞いたら、そうだ、と返ってきました。この時期は殺生をしない。獲れる状態にしておかない。
罠を置かせてもらっている土地の持ち主から、電話がかかってくることもあるそうです。お盆のあいだは止めておいてほしい、と。
言われるまでもなく止めるけれど、言われることもある。そういう時期なのだと思います。
止めれば、その分だけ減る
今年の八月は、四日から五日ほど作業が止まりました。
止まるということは、その分だけ入荷が減るということです。加工できる量も減ります。八月はもともと、気温と湿度で作業スピードが落ちる月です。そこにさらに、数日の空白が入る。
それでも今月は52kgできました。目標は50〜60kg。猛暑とお盆をはさんで、この数字です。
私たちは、この四、五日を埋めようとは考えていません。
「制度としての、獲らない期間」と、そうでないもの
鹿を獲る時期には、制度で決められた枠があります。
十一月十五日から翌年二月十五日まで、というのが全国の原則です。ニホンジカについては三月十五日まで延長している地域が多い。これが狩猟期間です。
一方で、田畑の被害を防ぐための有害捕獲は、期間の外でも行われます。Rawtoの原料になっているのは、こちらの、獣害対策で捕獲された鹿です。
制度の上では、八月に捕獲することは何も問題がありません。むしろ被害が出るのは、作物が育つこの時期です。
それでも、止める。
制度が決めているのではなく、そこにいる人が決めている。お盆の数日間は、そういう時間です。
くわしくは鹿は、いつ獲られているのか。に書きました。
数字にならないもの
事業として見れば、四、五日の停止は損失です。年間で最も暑く、最も生産が落ちる月に、さらに止まるのですから。
けれど私たちは、この判断について一度も相談を受けていません。当たり前のこととして、毎年止まっている。
Rawtoは「命を活かす」と言っているブランドです。その言葉が本物かどうかは、たぶん、都合のいいときに何をするかではなく、都合の悪いときに何をやめるかで決まります。
八月の四日間。
それが、私たちのフードが作られている場所の、いちばん静かな時間です。
鹿がどう扱われて製品になるのかは、こちらに書きました。
MAIZURU LETTERS ─ 舞鶴からの便り。